抱き合う恋人たち、天蓋の下の花嫁、花束、天駆けるロバや馬、ヴァイオリンを弾く牡牛。これらお馴染みのモチーフが重力や時間、遠近法などの法則から解き放たれ、ロシアの町並みの中に浮遊するシャガールの作品。美しい色彩に彩られ、夢と現実が交錯するその幻想的な世界は不思議な美しさに満ちています。
マルク・シャガール(1887-1985)は20世紀の画家の中でも最も愛された画家の一人です。ロシアのヴィテブスク(現在のベラルーシ共和国)に生まれ、23歳でパリに出てキュビスムなどの前衛的な美術の影響を受け、独自の表現を築いていきます。第一次大戦やロシア革命の勃発で一度故国に戻りますが、再びパリに出てからはフランス国籍を取得し、フランスを代表する画家の一人として、絵画ばかりでなく舞台美術やステンドグラス、陶芸などに幅広く活躍しました。画家としては恵まれた道を歩んだ彼も、ロシア系ユダヤ人として生まれた宿命から、革命や戦争、人種差別や大量虐殺など、今世紀に起こった数々の悲惨な事件に翻弄される生活が長く続きました。それでも“生ある間はその生を愛と希望の色彩で彩るべきでありましょう。”と、ひたすら愛の心象風景を描き続けました。
20世紀最後の年の幕開けにあたる今回の展覧会は、日本国内に所蔵されているシャガールの青年期から晩年にわたる作品の中から、油彩画、ドローイング、版画による連作(「死せる魂」「寓話」「聖書」「ダフニスとクロエ」「サーカス」等)215点よって構成し、逆境の中でも、故郷ヴィテブスクへの望郷の思いと人々の愛を信じて、20世紀を生き抜いたシャガールの芸術の奥深い魅力を再発見していただこうとするものです。
会期
2000.1.22 [土] - 3.20 [月]
観覧料
一般570円(470円)、大高生470円(360円)
※( )内は20名以上の団体料金。
※中学生以下と65歳以上、障害者手帳をお持ちの方(付き添い1名を含む)はいずれも無料です。展覧会入場時に確認いたしますので
主催
埼玉県立近代美術館